嘘男の小説置き場
盾矛パラドックス
第1話
おふる
「起動」
大陸の中央に位置する人間の国ユーダガルダは東西南北を4つの国に囲まれている。
物語は機械の国アルバニスの国境から始まる。
ユーダガルダ西方、W-12地区戦場にて。
草原の戦場に5㎞程を開けて機械の兵と人間の兵が野営している。
人間側野営所。
戦場に似つかわしくなく、鎧も身に着けず、学生服に身を包んだ少女は冷静に戦力の分析をしている。
盾序列32位プーモ・エステネス(必中必守のプーモ)
適合盾:ホーミング
「W-12地区戦場。現在時刻9時半、スタートは10時。人型機兵1000に対して、うちは盾兵200と矛兵300の合計500っと。戦力的にはちょうどかなー。水と電気属性の人が少ないかな。。。」
少し考えたところで、彼女は友人の顔を思い浮かべる。
「人型機兵って旧式ばっかだから、水属性のフィリアが居れば楽勝なんだけどな。。。あの子、今別の地区だっけ」
小規模戦闘とはいえピリピリとした戦場の中、野営所の片隅でメモを取る少女を見た若い矛兵が口を開く。
「上官、あの子は書記兵ですか?やけに軽い格好ですね。」
「お前は馬鹿か。参加する戦場の盾師の顔くらい覚えておけよ。今回の戦場はスラッド・リーグさんとプーモ・エステネスさんのペアとユングと試験兵のペアだ。ユングの方は覚えておかなくてもいいが、スラッドさんとプーモさんは覚えておけよ。」
「はい!上官!」
上官が15,6歳程の少女に敬称を使うことに驚きはしたが、若い兵にもその名前に聞き覚えがあった。この会話が少女に聞かれていないことを願うばかりだった。
椅子に座る少女に40代中頃の隻眼の男が近づいて行った。
矛序列37位スラッグ・リーグ(隻眼のスラッグ)
適合矛:オーバードライブ
「プーモ。作戦会議終わったぞ。」
「あ、スラッグさん!おかえりなさい。どうだった?」
「拮抗した段階で、前線の固まった敵を叩く。いつも通りだ。。。あと作戦会議には参加してなかったが、お前んとこの先生が来てるらしい。ユングとか言ったか?」
「え!ほんと?・・・ちょっと挨拶に行ってきます!」
そういうとプーモはノートを鞄にしまい、走り出していった。
「開始までには帰って来いよー!!」
野営地内某所
ユングと呼ばれる20代中頃の筋肉質な男はうつむいて何かをつぶやいていた。
「まじかー。動かないとか聞いてない。。。帰りたい。」
魔法使いといった風貌に、フードを被り下を向いてぶつぶつとつぶやく姿は不審者以外の何物でもない。
その隣にある、ガラクタを集めただけのようなロボットも男をより不審者らしく見せていた。
「せんせー!」
プーモがユングを見つけて走り寄ってきた。
「おー。プーモか!元気にしてたか?」
「先生!お久しぶりです!っていっても一週間ぶりくらいですね!
これが評議会から渡されたロボットですか?なんというか・・・とても個性的ですね!」
「そうなんだよ。この個性的ながらくたを評議会から渡されたんだが、全然動かなくてな。」
そういいながら、ユングはロボットの起動ボタンを押した。
「・・・ピー、ピー、ガガっ、ピーーー・・・・・・ボン!!起動ニ失敗シマシタ。セーフモードヲ試ミマス。」
何かが破裂した音がして、ロボットから煙が上がる。
「とまぁこんな感じで全然動かない。今回は支援に集中するよ。」
「評議会の対応はいつもひどいですね。わたしは今回左翼側に居るので、なにかあったらすぐ来てください。私に何かできることがあればいってください!」
「ああ、ありがとう。でも先生がこれじゃあ生徒に示しがつかないからな、なんとかするさ。」
会話を止めるように、サイレンが鳴り響いた。
「これより、W-12地区戦場の戦争行為を開始します。各自持ち場についてください。
繰り返します。まもなくW-12地区戦場の戦争行為を開始します。各自持ち場についてください。」
伝令の兵が駆け回りながら、各自に準備を促す。
「ユング先生。それではわたし行きますね。」
「ああ、気をつけてな!」
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物語はこの戦場から少しずつ動き出す。
1000年近く続いてきた戦争。悠久の時を経て戦争は常態化し、日常となった。
この戦争を終わらせるのは最強の矛か、最強の盾か。
おにゅー